第6回(2012年)日本物理学会若手奨励賞 (素粒子論領域)



受賞者: 石渡弘治(California Institute of Technology、Postdoctoral Scholar)
対象業績:「崩壊する暗黒物質シナリオでの逆コンプトン散乱により発生する高エネルギーγ線の研究」
対象論文:
[1] "Cosmic Gamma-ray from Inverse Compton procession unstable dark
matter scenario"
K. Ishiwata, S. Matsumoto and T. Moroi, Physics Letters B 679 (2009) 1-5
受賞理由:
 2008年にPAMELA実験により報告された宇宙線成分における陽電子の
過剰は、「暗黒物質の崩壊や対消滅によるもの」「パルサーによるもの」
などその解釈をめぐる活発な理論研究活動を生み出してきた。石渡氏は
その初期からこのテーマの研究に取り組んできた。特に対象論文では、
暗黒物質が主にμ+μ-に崩壊することにより過剰な陽電子が生成された
とする説に基づき、その検証方法としてO(1)TeVのエネルギーを有する電
子・陽電子が宇宙背景放射に衝突すること(逆コンプトン散乱)により発生
する高エネルギーのガンマ線に着目し、その有効性を探求している。主要
な結論として、銀河外からの寄与が定量的(銀河中心から離れた方向で
は銀河からのものと同程度かそれを超える量になる)および定性的(暗黒
物質の分布の一様性より等方的な寄与を与える)に重要であることを明
快に提示している。PAMELA等が観測した異常は現在も未解決で重要課
題として残されている。対象論文で成された予言は、暗黒物質の間接探
索の道標として重要な成果であると考えられ、高く評価できる。

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